洗い張りとは

着物の縫い糸をほどいて反物(たんもの)(仕立てる前の状態)の状態に戻し、水洗いをして着物をキレイにする方法です。平安時代頃には既にこの洗い方で洗濯が行われていたとも言われるほどの伝統的な洗濯方法であり、年季のはいった着物も「洗い張り」で絹特有の風合いと光沢を蘇らせることができます。着物生地の素材や厚み、状態によって扱う洗剤や器具、手法までもが変わるクリーニング方法であるため、生地を傷めたり、色合いを損䛽たりすることはございません。また、仕上がりは反物の状態のため、着物にするためには再仕立てを行う必要があります。その際には、現在のお体に合わせてサイズ変更やその他の微調節が可能です。また、子供用に仕立て直すこともできたりなど、お好みに合わせてリメイクすることもできます。

洗い張りのメリット

Point 1

見えない所の汚れや細かい汚れに

反物に戻して洗うため、着物を丸洗いするよりも細かい汚れなどを落とすことができるため、生地本来は鮮やかさや柔らかな質感を蘇らせることが可能です。

Point 2

生地の素材や厚み、状態にあわせてクリーニング可能

職人の手作業で行うため、着物の生地や素材や厚み、状態に合わせて洗剤の濃度や扱うブラシ、手法までもが変わるため、着物を傷つけることなくクリーニングすることが可能です。

Point 3

より丈夫で長持ち

反物の状態から再度仕立てなおすため、お好みに合わせて自由自在に形を変えることも可能です。現在のお体に合わせた着物や、子供用にリメイクすることでき、なおかつ、その際には縫い糸も新しい糸で縫うためより丈夫な着物となり長持ちすることが期待できます。

着物の洗い張りは自分でできる?

結論から申し上げますと、素人ではほとんど失敗に終わってしまうため、残念ながらほぼ不可能です。着物の洗い張りは、その工程のほとんどが手作業のため、非常に手間のかかる面が多く、なおかつ洗い張りに対する知識や技術を要するので、今までより美しい仕上げにしたいという方にはお勧めできません。そのため、「絶対に失敗しない自身がある!」という方でない場合は経験豊富な職人に任せたほうが良いです。プロの職人による洗い張りでは、傷みや縮みがないのは当たり前で、着物生地本来の風合いや光沢をより一層感じられる仕上がりになることが期待できます。なお、ご家庭での洗濯で既に生地を縮ませてしまった場合、プロの洗い張り業者でも生地の状態を元に戻すことは非常に難しくなります。

洗い張りの工程のご紹介

Step 1
解く、端縫い

1. 解く、端縫い

専用の洗剤とブラシで丁寧に洗います。

Step 2
ブラシで水洗い

2. ブラシで水洗い

着物の下に汚れを受ける布を敷き、溶剤が付いている部分にスプレーガンをあてます。スプレーガンで水を噴射し、溶剤で溶けた汚れを布へ移します。場合によっては、ハケを使ってたたき落とすこともあり、着物の状態や汚れ方によって作業を変えています。

Step 3
乾かす

3. 乾かす

シワをつくってしまうと着物の栄えに大きく影響するため、ピンと張り、汚れが落ち損ないが無いか確認しながらか乾かします。

Step 4
はりいれ、湯はし

4. のりいれ、湯のし

ムラができないよう丁寧にのりを塗る。そして蒸気を当てて反物を柔らかくしつつ、縦糸と横糸の繊維を均等にして幅を整えて完成。

洗い張り
~張りの種類~

  • 板張り

    板張りとは、布を洗濯し、糊付けをした後に板に張り、シワにならないようしっかりと伸䜀しつつ光沢を出して仕上げることです。戦前までは家庭で行われることが多かったのですが、のちに専門業者に依頼することが増えました。今ではほとんど一般的ではなくなりましたが、一部のクリーニング業者ではまだまだ現役でこちらの手法を用いる場合もあります。また、コットンやレーヨン素材に対して板張りは相性がよく、型崩れや傷んでしまうなどの心配はございません。対照的に、絹ちりめん、縮緬、木綿縮などの素材にこの手法を使うと形崩れや傷んでしまう場合が多いため、これらの素材に対して板張りを用いるのは避けたほうがよいでしょう。

  • 伸子張り

    伸子張りとは、伸子と呼䜀れる両端を細く尖らせた竹棒を用いて布や反物の縦、横の幅を均一に張る手法です。伸子張りにおける伸子は、一反当たりおおよそ300本ほど用いるためシワが生まれにくく、より正確に幅をそろえられることが特徴です。板張りとは対照的に、縮緬、お召、羽二重、紗などに用いられる場合が多いです。

  • 湯のし

    湯のしとは、布や反物に蒸気を当てて生地、繊維をより柔らかな風合いにしつつ、シワを伸䜀して縦、横の幅と長さを整える手法です。また、他の張り手法よりも一般的で、今でも多くの着物クリーニング業者が用いている場合がおおいです。